「EVは、走る原発」か。

 「EVは、走る原発」と言う記事を反原発の方が書かれています。EVは電気を大量に使って電気が足りなくなり、新たな原発を作らないといけなくなるという意見です。EV乗りとしては、そんなことはないだろうと反論を考えてみました。

 まずあたりまえのことですが、これからEVが普及するに当たってまず使うのは深夜電力です。原発に限らず電力会社の発電所は細かい出力調整が苦手です。というか一度運転を始めたら一定の出力で運転するのが一番効率がいい。自動車なども同じですよね。するとどうしても深夜の電気があまってきます。一般的に深夜電力料金は電力会社の発電コスト以下の値段で売られています。このあまっている電気をEVは使うわけで、EVのために原発を新たに作ったり、化石燃料を今まで以上に燃やしたりすることはよっぽどEVが普及しない限りないでしょう。

 行政は太陽発電や風力発電の普及に取り組んでいます。そうした自然エネルギーで発電した電気を電力会社にかなり高い値段で買い取ることを法律で義務付けています。しかし、こうした自然エネルギーで発電された電気は出力が不安定で、電力会社は扱いに困っています。自然エネルギーが普及しにくい要因になっています。この不安定な電気もEV充電用のとしてはそれほど問題にはなりません。EVの普及初期は、通勤、買い物、近所への配達など限られて用途に使われると思われます。昼間バッテリーが空になるまで走って、夜の限られた時間に充電して、満充電になったらまた目いっぱい走るという使い方はしないでしょう。そうすると、使ってない時間はコンセントにつないだままで、使うときはコンセントを抜いて走るということになります。つまり、コンセントにつないでいる間につねに安定した電気がきている必要はなく、コンセントをつないでいる間の積算電力がバッテリーの容量になればいいわけで、EVは自然エネルギーを有効に使うことができる電気の安定化装置の役目をします。

 柏崎の原発事故で電気が足りなくて困ったというニュースを聞いたのは、真夏の1週間ほどの大都会のオフィスの冷房だけのためです。このとき以外に電気が足りないというニュースは聞いていません。地球温暖化というのは人類の経済活動だけではない。地球自体も長いスパンで呼吸をしていて、たまたま今、息をはく時期だという学者が結構います。わたしも、ちょっとそっちの方が正しいのかとかたむきかけていますが、夏に大都会が暑いヒートアイランド現象は、間違えなく人類の経済活動から来ています。ヒートアイランド現象の原因は、オフィスのエアコン、自動車、アスファルトがそれぞれ同じ割合で原因になっています。この中の自動車をEVに置き換えると、EVは走るための廃熱は出ません。エアコンも、エンジン車のように外気と自身の廃熱で車内が熱くなるのと両方を冷やさないといけないに比べたらわずかなエネルギー、廃熱です。EVが普及したら柏崎原発はいらなくなるかもしれません。

 余談ですが、柏崎原発周辺は東北電力の営業範囲であることを、今回の原発事故で知りました。柏崎原発周辺の方々は、首都圏の快適な暮らしのために、ご苦労されていたんですね。また、[EVは走る原発]を書かれて方がいつ、どのような環境で書かれたかわかりませんが、もし真夏に大都会のエアコンの効いているオフィスで書かれているとしたら、それこそが原発を必要とする行為で「生きる原発」ということになるのではないでしょうか。

2008 3 19 (c)nakahara makoto@emilie

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